都心3区の一つ中央区にて、平成 26・27年度の2カ年にわたり実施した「地下鉄計画検討調査」の成果を取りまとめたもの報告書が2016年7月20日に一般開示されました。
これは、著しい人口増加が想定されている晴海地区や大規模開発の進捗している江東区有明等の臨海部と、銀座等の都心部との交通需要の大幅な増加への対策として、地下鉄の新線を通そうという壮大なプロジェクトであります。
▼検討対象地域
中央区の努力の結果、2016年4月に国土交通省の交通政策審議会にて、「国際競争力強化につながる8事業」として選出されました。
いや〜これに関しては、本当に中央区は良い仕事をしました!
2年程度の比較的短期間で結果的に第一段階目標としていた答申に乗ったわけですから。
まさに有言実行ですね。こう言った行動力のある自治体は、そこ住んでいる方にとっては大変心強い存在です。
そして今回、中央区から開示された報告書には、地下鉄新路線の意義・必要性、建設計画、運行計画、概算事業費について72ページにまとめられています。その内容を整理して要約してみました。
背景と目的
背景
- 臨海部(豊海町・勝どき・晴海地区等)は、都営大江戸線のみであり、 鉄道不便地域が広がっている。
- 臨海部では高層マンション等の開発により居住人口が増加している。
- さらに 2020 年東京オリンピック後には、選手村跡地開発の他、様々な開発が予定されており、今後更なる居住人口の増加が予想されている。
- 国際競争力の強化として、豊洲市場や千客万来施設 及びMICE施設、大型クルーズ客船ふ頭等、新たな集客施設の建設が始まり、従業人口及び観光客等の交流人口の増加が予想されている。
上記1〜4により、臨海部における居住人口及び交流人口の増加に伴い急増する都心部と臨海部間の交通需要への対応が課題となっている。
地下鉄新路線の必要性
- 国家戦略特区エリアやアジアヘッドクォ ーター特区エリアといった将来の東京圏の発展を担う拠点である。
- 国際的ビジネス拠点の整備や訪日外国人の増加に対応したMICE機能強化拠点の整備、国際金融、コンテンツ産業等多様なビジネス交流拠点の整備が現在進行中である。
- 他の拠点地区より、鉄道ネットワーク密度が低い、都心に近いながら鉄道不便地域になっている。
- 勝どき地区や豊洲地区では、駅周辺に高層ビルが集中し、急増した鉄道駅利用者による混雑が発生している。
今後も高層ビルや大型集客施設の建設が進み、将来急増する交通需要への対応が急務である。
銀座付近から国際展示場付近のルート案
中央区が実際に検討していたルート案がこちら。(これをもとに東京都で答申が進められていました)
ルートについて
- Aルート・・・晴海通りと環状2号線の間の道路下を掘る案
- B-1ルート・・・晴海通りを超深く掘る案
- B-2ルート・・・晴海通りを普通の深さで掘る案
マンコミュ掲示板では、晴海通り案と環状2号線案で、自論合戦が繰り広げられていましたが、一旦終止符が打たれましたね・・・
ただ、これは需要を見れば分かったことではないでしょうか?
選手村跡地がある環状2号線を通すのではという予測も多くありましたが、明らかにマンション居住者需要のためだけに振るよりも、トリトンスクエアなどの、オフィス・商業利用者需要を意識した方が、エリアとしての発展を望めるでしょう。
そして、新市場に関しては、やはり都が絡む大型事業ですから、こちらも新路線を引く際には、外せない観光スポットとして位置づけるのは、当然かと・・・
一応、中央区の公式説明ですと、
- 中央区内においては、環状2号線は、東京都で現在検討しているBRTが運行される予定であり、また都道 473 号は東京メトロ有楽町線が運行しているため、本路線と重複して地域の交通利便性に偏りが生じることから、晴海通りの直下及び晴海通りと環状2号線の間の道路の直下にする。
- 江東区内においては、有明通りは、晴海大橋及び首都高速晴海線があり、その直下に地下鉄を敷設することは難工事になる。また晴海通りは東京メトロ有楽町線が運行していることに加え、起終点である国際展示場付近にスムーズに取り付けることを合わせて考えて、環状2号線の直下にする。
となっています。
駅について
駅については下記の2案で検討していくとされています。
- A案:①新銀座 − ②新築地 − ③勝どき − ④晴海 − ⑤新市場 − ⑥新国際展示場
- B案:①新銀座 − ②新築地 − ③勝どき+晴海 − ④新市場 − ⑤新国際展示場
「勝どき駅」と「晴海駅」を分けるA案と、同じ駅としてまとめるB案。
こちらに関しては、どうなるんでしょうかね〜。
どちらになったとしても、ドゥ・トゥールは利便性がUPしそうです。かなりの好ポジションにありますね〜。ただ、ドゥ・トゥールに関してはそれも織り込んでの価格設定でしょうから、キャピタルゲイン的な恩恵は薄そうです・・・
もし、「勝どき駅」と「晴海駅」が分かれたとして、晴海トリトンスクエアの地下あたりにに「晴海駅」ができたりすれば、駅遠で散々叩かれてきた、晴海2丁目のパークハウス晴海タワーズやパークタワー晴海などの価格が高騰しそうですが、どうなることでしょう・・・・
中央区は駅を検討する上で、
- 中間駅は河川や運河で分断されている地域ごとになるべく1つずつある ことが望ましい。
- 駅数を増やすと、建設費が嵩み、かつ鉄道の表定速度が低下し、鉄道乗車時間が増加するため、可能な限りで駅を統合することが望ましい。
- 鉄道利用者の利便性及び今後の高齢化や防災の観点から、駅構造は、原則、地上にできる だけ近い場所が望ましい。
といった項目を挙げており、これから察するに、
「勝どき駅」と「晴海駅」については、なるべく統合したいと考えているのではないでしょうか。
また、ルートに関しても、B-1ルートは可能性が薄そうです。
「有明テニスの森駅」は通して来るのではと密かに予想していましたが、この時点で候補に上がっていませんし、駅数は増やしたくない感を文面から感じ取れるので、可能性は低そうですね。これが有明ガーデンシティの価格にどう響くか?見ものですね。
運行について
運行ダイヤは、運行間隔を他の既存の東京の地下鉄路線を参考に、4分間隔で運行することで想定し、速度及び車両編成を算出したようです。
銀座から国際展示場まで7.5〜8.5分です!
今現状だと、銀座から国際展示場までは、タクシーで15分、都バスで20〜30分です。晴海通りが結構混むので、それなりに時間かかるんです・・・
やっぱり地下鉄は早くて便利ですね!
事業費について
2400億〜2600億円の見込みとなっています。
- 営業・整備主体:新規の第3セクターを想定。(上下一体方式)
- 補助制度:地下高速鉄道整備事業費補助の適用を想定。
- 運 賃:周辺路線である東京臨海高速鉄道並みと想定。
- 建設期間:5年間を想定。
終始結果を見てみると、B-2ルートが黒字転換まで22年で一番採算が取りやすいルートになりそうです。ただし、B-1ルート(首都高延伸が決まり、深くまで掘る必要がある場合)になってしまうと、黒字転換まで31年となってしまい、実現度が遠のきますね。
今後に期待
2016年4月に国土交通省の交通政策審議会にて、「国際競争力強化につながる8事業」として選出されて以来、あまり進展が聞かれませんが、どうなっているのでしょうか。
年度内に中央区かTXから具体的な検討方針でも出てると一気に期待が膨らみそうですが・・・
さらに、経済対策の事業規模を当初の倍の”20兆円”に増額する方向で調整中との報道もありました。この20兆円のうち、国の補助を受けて民間企業が行う事業に6兆円程度が割り当てられる想定とのことですので、国の補助を受けながらTXが頑張れば、地下鉄新路線も夢ではなくなりそうです。
これはデカイな
政府 経済対策20兆円超で調整 – Y!ニュース https://t.co/nA4LBF6OA0
— 都心湾岸丸 (@tokyo_jcs) 2016年7月20日
将来的には、新線を延伸したり、既存の鉄道ネットワークと接続することで、こんな感じになる日が来るかもしれませんね〜。
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