東京都は、2015年9月末に運行事業者として選定した京成バス株式会社とともに、BRTの事業化に向けた検討を重ね、具体的な内容を詰めてきました。
そして2016年4月4日、事業の進め方や具体的な事業内容等について、事業計画としてとりまとまったとのことで、報道発表資料が一般公開されました。
引用元:都心と臨海副都心とを結ぶBRTに関する事業計画 http://www.metro.tokyo.jp/INET/KEIKAKU/2016/04/70q44100.htm |
公表資料を少しでもわかりやすくまとめられればと思い、今回エントリ作成しましたので、少しでも参考にして頂けましたら幸いでございます。
BRTとは?
そもそも「BRT」とは何ぞや?という方もいるかもしれませんので、簡単に説明を。
都心から約6km圏内に位置し、都心に近接する貴重な住宅地としての開発や、MICEの誘致や国際観光機能の強化など、 東京の経済活動の一翼を担う重要な地区である「勝どき」「晴海」「豊洲」などの臨海副都心(よく言う湾岸エリアですね)。
このエリアは東京五輪を見据えて、豊洲市場の開場、環状2号線の暫定開通、競技施設や選手村の整備などに加え、環状2号線沿道地域の住宅開発などの開発が現在急ピッチで進められていますし、今後も開発が進んで行く予定です。
しかしながら、「勝どき」「晴海」等は昔から「鉄道利用不便地域」とも呼ばれ、東京や新橋などの都心からの距離が6km圏内にありながら、都心と直通する鉄道がないために、15~20km圏に位置する地域と同等の距離感となってしまっています。
今後の発展に伴う交通需要の増加を考えた際に、ここが非常に大きな課題とされてきました。
そこで、都心と臨海副都心とを結ぶ BRT(バス高速輸送システム 英: bus rapid transit)という、こうした一帯の交通需要の増加に速やかに対応し、東京2020大会以降も地域の発展を支える新たな交通機関を導入する計画を中央区と東京都が計画してきました。
BRTを運行させることで、
このような目的達成を狙っています。
これまでの経緯
平成 26 年 8 月 | 基本方針の策定・事業協力者の公募 |
平成 26 年 10 月 | 事業協力者の選定(京成バス(株)、東京都交通局) |
平成 27 年 4 月 | 「都心と臨海副都心とを結ぶ BRT に関する基本計画」公表 |
平成 27 年 7 月 | 運行事業者の公募開始 |
平成 27 年 9 月 | 運行事業者を京成バス(株)に選定 |
平成 27 年 11 月 | 東京都都市整備局と京成バス(株)とで基本協定締結 「臨海副都心周辺地域における公共交通協議会」設置 |
平成 28 年 4 月 | 「都心と臨海副都心とを結ぶBRTに関する事業計画」公表 |
平成26年8月の、基本方針策定から約1年半という比較的短い期間でトントン拍子で進んできています。
このことからも、東京都としてこの湾岸エリアの交通事情の解消を大きなポイントとして捉えていることがうかがえます。
バスとの違いは?
はっきり言って、「バスと同じなんじゃない?」なんて思われる方も多いでしょう。
しかし、東京都が次世代交通と謳うくらいですから、それなりに期待しても良いのではないでしょうか。
個人的には、下記の3ポイントが通常のバスとは大きく異なる差別化ポイントになると考えています。
【差別化ポイント1】到着時間が読める
- バス運行において所要時間が変化する大きな要因は、道路渋滞と停留所での停車時間です。
- BRT 運行に際しては、限られた道路空間を有効に使うことや、公共交通に対する啓発や利用促進キャンペーン等を実施し、道路渋滞の緩和に向けて取り組みます。
- 停留所での停車時間を極力少なくするために、簡便な運賃の支払方法の採用、全ての扉での乗り降り、隙間や段差がなくフラットなホーム形状の採用を図っていきます。
【差別化ポイント2】輸送規模の大きさ
- 選手村再開発後には全線合計でピーク時2,000 人/時程度(片道)の輸送力の確保を目指します。将来的には、需要に見合う輸送力確保に努め、5,000 人/時程度の輸送力を目指します。
- 公共交通優先施策や、乗降時間の短縮等のあらゆる対策を講じ、路線バス以上LRT・新交通システム並みの速達性及び定時性の確保を目指していきます。
【差別化ポイント3】運行時間帯
- 新橋駅から豊洲市場への早朝時間帯需要のほか、沿線マンションの開発により深夜時間帯の需要も考えられることから、新橋駅発5時台~24時台の運行を検討いたします。
他にもBRTの特徴はありますが、上記の3ポイントが実現するだけでも、新たな交通機関として需要を満たしてくれそうです。
運行ルート
それでは、今回公表された運行ルートを見ていきたいと思います。
2019年と2020年大会後、そして晴海選手村再開発後の3つの時系列に合わせて路線イメージが公開されています。
2019年の運行開始時は、新橋駅〜勝どきルートと新橋駅〜豊洲ルートでの2系統での運行となります。新橋駅から晴海三丁目までは約10分想定とのこと。早いですね!
東京五輪終了後からは、新橋駅~市場前・有明テニスの森・国際展示場駅のルート運行が加わり、3系統での運行となります。
そして、選手村の再開発完了後には、選手村への分岐ルートも作られ、4系統での運行となります。
選手村の再開発に関しては、先日の東京都の公表資料によると2024年度までに事業完了予定となっています。(東京2020大会後の選手村におけるまちづくりの整備計画について)
運行ルートは、道路交通状況や東京2020大会の準備等による影響を見ながら、運行を広げていく予定だそうです。
各停留所については、こんな感じで分布されます。
晴海二丁目と、選手村には、停留所というよりもターミナル・車庫ができる計画となっています。
ただ、選手村については、位置などはまだはっきりとは決まってなさそうです。
一方で、晴海二丁目に関しては、都有地だった空地の半分が交通ターミナルとなるようです。
こちらに関しては、ザ・パークハウス晴海タワーズ クロノレジデンス・ティアロレジデンス や パークタワー晴海 などの大規模マンションがすぐ目の前ですから、居住者や検討者の方は、今後どんな施設が出来上がるのか、動向が非常に気になるのではないでしょうか?
個人的には、このあたりのマンションは建物・設備的には魅力的なものの、駅徒歩で叩かれる意見も多かったですから、BRTターミナルまで徒歩1分になることで、どれだけ利便性が向上し、資産価値や物件価格が上がるのかも気になるところではありますね。
その他計画案
BRT車両のイメージ
- 運行計画に基づき必要車両台数の算定を行い、単車型車両については、燃料電池バスを全数調達できるよう、メーカー等と協議を進めます。
- 連節型車両については、国内メーカーに2020 年までの低公害型車両の開発・市場導入を強く求め、将来的に燃料電池連節バスの導入を目指します。
- 需要の伸びを見据えた年次ごとの調達・更新計画を策定し、燃料電池バスの普及を促進します。
BRT停留所のイメージ
- 停留施設は、地域の生活拠点となるよう“駅”としての機能と構造にします。
- 車椅子の方が1人でも乗り降りすることができるように、プラットホームとバスの隙間及び段差なしの乗降を実現するため、プラットホームをかさ上げします。
- プラットホーム内にはベンチや情報案内装置等も設置します。
- シンボル性を持ち、次世代都市交通の象徴として統一感のあるデザインを検討していきます。
運賃収受方式
- 首都圏において広く普及している交通系ICカードの導入を予定します。
- 定時性確保の観点から、ICカードを持たない利用者についても、乗車券を事前販売(券売機等)するなど、車内での現金収受を実施しない方向で検討します。
- 上記を通して、従来のバスシステムとは異なる、スムーズな乗降を実現し、速達性・定時性の向上を図っていきます。
- 運賃については未定です。
今後のスケジュール
2017年4月には、BRT事業を運営していく、新会社が設立され、その4月以降から停留施設の工事が進んでいきます。
2019年10月には、ようやくBRTが運行開始。
その翌年2020年7月の東京五輪での大規模輸送に向けて、段階的に運行を増やしていく想定となっています。
まだまだ、未定の部分もありますが、東京都が全力で取り組んでいる事業の一つです。期待しましょう。
特に湾岸エリアと関係がある方達につきましては、大いに期待されているのではないでしょうか。
かくいう私も、中央区勤務なので、今後の動きには注目しつつ、期待を寄せています。
引用元:都心と臨海副都心とを結ぶBRTに関する事業計画 http://www.metro.tokyo.jp/INET/KEIKAKU/2016/04/70q44100.htm |