先日、とあるニュースを見て、興味が湧いたので、『築地』をお散歩してきました。
歴史的建築物などの保存に取り組む米国の非営利団体「ワールド・モニュメント財団」(WMF、本部ニューヨーク)は、36カ国計50カ所の「危機遺産」リスト(2016年版)を発表、日本からは中央区築地の近代の木造建築群が選ばれた。一等地のため開発圧力を受けており、歴史的街並みの喪失が危ぶま れるとしている。 リストは緊急に保存・修復などの措置が求められる文化遺産を危機遺産と認定。築地の建築群は、主に昭和初期以降に建てられた木造の約30件。築地場外市場にある円正寺や、瓦屋根の「町家型」、看板のような装飾を取り付けた「看板建築」の建物などが含まれる。
(日本経済新聞より一部引用)
市場とともに発展してきた「築地」
都心3区のうちの一区、東京都中央区。その中央区を代表する世界的にも有名な”銀座”から徒歩10分程度に位置する『築地』。今回はこの『築地』に注目しています。
築地と言えば、世界最大級の水産市場として広く知られている築地市場が有名で、さらに市場の北隣には一般の人も買い物できる場外市場があり、毎日多くの人で賑わっています。
そんな市場の影響もあり、築地は都心にありながら高度成長期やバブル期の開発の影響をあまり受けなかったと言われており、10階程度の中層ビルやマンションなどのすき間を縫うように、木造建築が今尚も残されています。
もともと築地市場は、1923年の関東大震災で当時の日本橋魚河岸が大損傷を受けた代わりに、臨時の市場として使われたのが始まりでしたが、市場を中心に活気が生まれ、それが人を引きつけ、都心にある食の問屋街として独特の「築地らしさ」が月日をかけて形成されていきました。
しかし市場は、2016年に豊洲に移転することが決定しており、市場の移転後は場外市場は残るものの、市場の跡地開発が進むことで、地区全体で開発が一気に進む可能性があり、築地の風景も大きく変わってしまうことも懸念されています。『危機遺産』に認定された木造建築達…
瓦屋根の「町屋」
町屋(まちや)とは、簡単に言うと間口の狭い民家が密接して建ち並ぶ昔の都市型住宅のことです。町家(まちや・ちょうか)とも言います。農村などでは、門を構えた敷地の奥に主屋が建つのに対し、町屋は商店街など通りに面して比較的均等に建ち並ぶ点に特徴があります。
歴史を感じさてくれますね~
看板のような装飾を取り付けた「看板建築」
看板建築とは、鉄筋コンクリート造で建てるだけの資力がない中小規模クラスの商店によって関東大震災後に数多く建設された、伝統的な町屋に代わる洋風の外観を持った都市型住居のことです。
こちらは看板建築として有名な「宮川食鳥鶏卵㈱」創業はなんと、明治34年(1901年)!!
つきじTASSぎゃらりー若松屋もともとバルコニーのついた銅版建築を2007年に大改装してギャラリーにしています。
築地場外市場にある円正寺築地はもともと58ヶ寺の寺町だったそうです。しかし、関東大震災後の再建時に各寺とも金銭的に苦しく、寺の敷地の一部を商売人に貸し店舗として 敷地内の使用を認めたそうです。その名残りとして円正寺には店舗がはいっています。
外壁の緑青色がなんともいえない独特の味を出していて、歴史を感じさせる建築群となっています。
途中でご紹介した、「つきじTASSぎゃらりー若松屋」のように、古い建築を残しながらも現代風にリニューアルしたりするなど、築地ならではを今後も残していってほしいものです・・・
都心にある”下町”
銀座から歩いて10分くらいでこんな風景に出会えるのが、なんだか不思議な感覚ですね。。。
細い路地もたくさなります。いかに住宅が密集していたかがわかりますね~。
築地って意外と公園も多いんです。
忍び寄る開発の影・・・
築地は、色々なところで工事が進んでいて、再開発ラッシュです。
「築地魚河岸」
再開発として有名なのは、築地新市場です。
市場自体は豊洲へ移転されてしまいますが、「にぎわい」と「食の問屋街という文化」を維持しつづけるために、新たな場外市場の建設が進められています。
そして、正式名称は「築地魚河岸」(つきじうおがし)となったようです。451点もの応募の中から選ばれた名称です。
▼「築地魚河岸」の選定理由
施設の所在地であり銀座や日本橋と並び本区内の著名な地名である「築地」と、魚市場の表現として一般的な「魚河岸」を合わせた名称で、施設の性格がわかりやすく表されています。築地市場移転後にあっても築地の活気とにぎわいを維持・継承する地域の中心的施設として相応しい名称であることから選定しました。(引用:中央区 地域整備課まちづくり推進主査)
1Fレイアウト
内観パース「築地魚河岸」は2階建て(一部3階建て)の造りで、敷地面積は約6800平方メートル。完全に大きな商業施設ですね。ショッピングモールみたいなカンジでしょうか。開業が楽しみですが、今までの場外市場とはずいぶん雰囲気が変わりますね・・・
ビル化が進む、お寺たち・・・
ビルの中にお寺が移転していってます
法重寺 善林寺ビルにお寺ってのも違和感ありませんか?私はあります。。。
先程ご紹介した「円正寺」は大丈夫でしょうか・・・・頑張ってほしいです。
他にも開発の影が・・・・
晴海通りの場外市場前交差点。マンションの広告がいつも並んでいます。この時は、「パークシティ中央湊」や「ドゥトゥール」のOOHが。
こちらは、パークホームズ築地グリーンサイド。総戸数 140 戸、2014年に三井不動産レジデンシャルが販売していたマンションです。人気殺到で即日完売だったようです。今年の5月には入居済みです。
こちらは聖路加タワーです。以前のエントリでも書きましたが、読み方は”せいるか”なのでご注意を・・・東京や銀座界隈は日々開発が進んでいますが、この築地も同じように、至る所で工事が行なわれています。まだまだ緑や公園や多い築地ですが、このまま開発がさらに進んでいくと・・・・
番外編??
散歩の途中で少し変わった建築を見つけました。
斜めに傾いている家です。
奥にマンションがあるのですが、マンション住民の方も心配ではないんでしょうか。建物間がほぼ隙間なく建てられていますので、火事にでもなったりしたら、大変そうです。。
ワールド・モニュメント財団(WMF)って何者?
ワールド・モニュメント財団(ワールド・モニュメンツ・ファンド:WMF)はニューヨークに本拠を置く国際民間組織で、国や文化の枠を越え、世界各地で政府・民間のパートナーと協力し、文化的・歴史的観点から見て重要性のある建造物の保存を推進、支援していくことを活動目的としています。WMFは1965年に設立。危機遺産と認定した建築物には保存や修復作業への助成を行うこともあり、過去には京都の町家や、東日本大震災で被災した宮城県気仙沼市などの文化財も選んでいます。
今回の『危機遺産』見学ツアー@築地 では、日本の古き良き文化と、そして築地の独特の街並みを楽しむことができました。
『危機遺産』って聞きなれない言葉ですが、こうやって海外の団体から日本の文化を評価(ある意味警告?)してもらえると、日本人が忘れかけている歴史や文化を守るという大切な側面を気づかせてくれますね。いや海外に頼るのではなく、日本人が日本の文化を守っていかねば・・・
私自身も都心には利便性を求めていましたが、『築地』にはこういった歴史的な建築や市場の文化、そして都心にある食の問屋街として独特の「築地らしさ」を守り続けていって頂きたいと思いました。